説明
ゆがんだチェック模様の上に、うずまきが描かれているように見えます。うずまきのどこかに指をおいて、中心へ向かってなぞってみましょう。じっさいに試してみると、何か変だな!と思いませんでしたか?そうです、中心までなぞろうとすると、指はどうしてもうずまき模様からはずれてしまいます。
なぜはずれてしまうのでしょう?もうおわかりですよね。うずまきはどこにもないからです。「すすむ」を押すか、画像を左にスワイプして、2枚目の画像を見てみましょう。これで正解がわかりました。半径が違ういろいろな円が描かれているのです。つまりうずまき模様に見えたパターンは、じつは同心円(どうしんえん)だったです。
1908年にイギリスの心理学者ジェームス・フレイザーにより発表された図形で、「フレイザー錯視」と呼ばれています。錯視の効果がとても強いため、見かけだけでなく、指の動きまでもがだまされてしまいそうです。
錯視をおこしているのは、円の模様です。よくみてみると、白と黒のパターンが、ねじれたヒモのように描かれています。そのため、この円の模様は、「フレイザーのねじれたヒモ」と呼ばれています。
では、錯視図形から、「フレイザーのねじれたヒモ」の部分だけを取り出してみましょう。下の図を見てください。白と黒のパターンからできている線分は、それぞれが傾いているように見えます。線分に定規をあててみるとよくわかるのですが、じつはどの線分も垂直です。
線分全体が傾いて見える方向は、白と黒のパターンそれぞれが傾いている方向と同じです。白と黒のパターンが右に傾いていると、線分全体が右に傾いて見えますし、白と黒のパターンが左に傾いていると、こんどは、線分全体が左に傾いて見えるのです。つまり、全体の印象は、個々のパターンの傾いた方向により作り出されるのです。これがフレイザー錯視の原因です。フレイザー錯視では、白と黒のパターンが、それぞれすこしずつ中心に向かうように傾いています。そのために、白と黒のパターンから作り出される円全体が、中心に向かってうずまいているように見えるのです。
このように、私たちの視覚システムは、個々のパターンが持ついろいろな情報を空間的に統合して、全体として認識する、という、とても複雑な働きをしているのです。
ところで、背景のチェック模様は、錯視の効果には関係がないのです。これは、錯視図形をにぎやかにするための模様だったのです。フレイザー錯視(シンプルLIFE)で確認してみましょう。
参考文献
- Fraser, J. (1908) A new visual illusion of direction, British Journal of Psychology, 2, 307-337
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。