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錯視動くと位置がずれる

説明をよむ

動画を再生して下さい。動いているパターンの位置がずれて見えます。

説明

動画を再生してみましょう。上段にあるしま模様のパターンは外側に向かって、下段にあるしま模様は内側に向かって動いています。この錯視を楽しむポイントはまず、動いているときでも、それぞれのパターンの位置は変わっていないのを確認することです。しま模様は、ぼやけた窓の中を動いていますが、ぼやけた窓自体の位置は変わっていないのです。いったんムービーを停止するとわかるように、ぼやけた四つの窓は、お互いにずれることなく並んでいます。

ところが動画を再生すると、このぼやけた窓自体の位置が、動いている方向にずれて見えます。そのため、上段と下段では、パターンの位置がずいぶんと違って見えます。上段の二つのパターンはお互いに反発して、外側にずれていているように見えますし、下段の二つのパターンはお互いに近寄っているため、より内側にあるように見えます。本来の位置は不変なのに、それが動きの方向にずれて見える、という錯視なのです。1991年にUCバークレーのラス・ディバロイとカレン・ディバロイ教授夫妻によって報告されました。

この「位置ずれ」錯視から、視覚システムの巧妙なしくみをかいま見ることが出来ます。目から入ってくる光の情報は、網膜から視神経を伝わって脳へ送られます。脳の後頭部にある視覚皮質(視覚を担当する大脳皮質の部位)は、とても複雑な構造をしており、ここでもいろいろな処理が行われます。つまり、光が目から入ってきてから、私たちがそれを認識する間には、ある程度の時間の遅れ(ディレイ)が必ず生じるのです。もし見ている対象が止まっているのであれば、多少の遅れは問題ないかもしれません。しかし、見ている対象が速く動いているとしたら、時間遅れは大問題です。動いている対象の位置をつねに見誤ってしまうかもしれないのですから。そうなったら、飛んでくるボールをうまく取ることもできません。そのような見誤りを防ぐために、視覚システムは、動いているものの位置を「先読み」しているのではないか、と考えられます。この「動くと位置がずれる」錯視には、視覚システムの賢明なしくみが表れているといえます。

参考文献

  • De Valois, R. L. & De Valois, K. K. (1991). Vernier acuity with stationary moving gabors. Vision Research, 31, 1619-1626.
  • Nijhawan, R. (2002). Neural delays, visual motion and the flash-lag effect. Trends in Cognitive Science, 6, 287-393.

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。

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