説明
静止した画像が動いて見える錯視を3点紹介します。最初の錯視図形は、北岡明佳教授(立命館大学総合心理学部)により作成されたものです。実際には静止していますが、じわじわと拡大しているように見えます。目を動かしたり、じっと見つめたり、いろいろ見方を変えてみましょう。それでも動きの錯覚は消えません。北岡教授による有名な「回転する蛇」錯視も必見です。書籍やネットで探してみよう。
2枚目の錯視図形は、作成したアーティストの名前から、「オオウチ錯視」と呼ばれています。中心のしま模様が、ゆっくりと一定の方向に動いているように見えます。
これらの静止した画像が動いて見えるのは、目の動きが関係していると考えられています。わたしたちの目は、つねに動いています。何かをさがすときのような大きな目の動きだけではなく、じっと見つめているときでも、じつは止まらないで、細かく動いています。目が動けば、たとえ見ているモノが止まっていても、その網膜像は動くことになります。通常は目と脳の巧妙なしくみにより、このような網膜像の動きは、実際の動きとは解釈されません。つまり、脳は、目の動きがもたらすブレを補正しているのです。このようなしくみがなければ、私たちの目の前のモノは、始終動いて見えてしまうでしょう。
「止まっているのに動く」錯視では、このようなブレ補正が働いていないために、止まっているパターンが動いて見えると考えられます。目は、つねに動いています。そのため、パターンは止まっていても、網膜の上では動きが生じます。脳の運動検出メカニズムが、この網膜像の動きを、「実際の動き」として検出するため、パターンが動いているように見えるのです。「止まっていても動く」錯視は、私たちが日常感じている「動く」という印象は、じつは全て脳が作り出している、ということを教えてくれます。
参考文献
- Kuriki, I., Ashida, H., Murakami, I., Kitaoka, A. (2008) Functional brain imaging of the Rotating Snakes illusion by fMRI. Journal of Vision, 8, 1-10.
- Murakami, I., Kitaoka, A., Ashida, H. (2006) A positive correlation between fixation instability and the strength of illusory motion in a static display. Vision Research, 46, 2421-2431.
- Ouchi, H. Japanese Optical and Geometrical Art. Dover Publications (1977).
- 「錯視完全図解 (Newton別冊)」 北岡明佳 ニュートンプレス(2007)
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。