説明
目をつぶって大きさが違う2つの物体を持ち上げると、質量は同じであるにも関わらず小さい方がより重く感じられます。この錯触の原型は100年以上前にフランスの医師Augustin Charpentierによって報告され、シャルパンティエ効果と呼ばれることもあります。
この錯触は、手でつかむことで感じられる物体の大きさの情報が、重さの判断に影響していることを示唆しています。我々の日常生活では、大きい物体ほど重いことが多いので、むしろ大きい物体ほど重く錯覚しそうですが、この大きさ-重さの錯覚ではそうなっていません。
この錯触が生じる一つの説明として、大きさから期待される重さが実際の重さと異なる場合に、その重さ感が強調されるという説があります。つまり、大きいものほど重いだろうと期待されるのに、実際にはそこまで重くなかった(軽かった)場合、その軽さが強調されて感じられるのではないか、ということになります。同様に、小さいものほど軽いだろうと期待されるのに、実際はそこまで軽くなかった(重かった)場合、その重さが強調されて感じられるのではないか、と考えられます。
しかし、期待を裏切られることによる効果だけでは十分に大きさ-重さの錯覚の効果を説明できないことも知られています。そこで、人間が物体の密度を重さ判断に用いていることもこの錯覚に寄与しているのではないかという説が提案されています。つまり、重さが同じでも大きさが違う場合、大きいものほど中身がすかすかな(密度が小さい)一方、小さいものほど中身が詰まっている(密度が大きい)と判断できるため、小さいものほどより重く感じられるという説明です。
ここでは触れて感じる物体の大きさが引き起こす錯覚について説明しました。しかし、物体の大きさが触覚的にわからない場合であっても、見た目の大きさの情報によって類似の錯触が生じます。詳細は見かけの大きさによる重さ錯覚をご覧ください。
参考文献
- Charpentier, A. (1891). Analyse experimentale: De quelques elements de la sensation de poids (Experimental study of some aspects of weight perception). Archive de Physiologie normale et pathologiques, 3, 122–135.
- Koseleff, P. (1957). Studies in the perception of heaviness. Acta Psychologica, 13,242–252.
- Huang, I. (1945). The Size-Weight Illusion and the “Weight-Density Illusion”. The Journal of General Psychology, 33(1), 65–84.
- Wolf, C., Bergmann Tiest, W.M., and Drewing, K. (2018) A mass-density model can account for the size-weight illusion. PLOS ONE, 13(2), e0190624.
デモのながれ
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。