説明
冬場に洗濯物をとりこむとき、洗濯物がまだ濡れているのかもう乾いているのかわかりにくいと感じた経験はないでしょうか? これは人間が洗濯物の温度も湿り判断に用いているせいかもしれません。
人間の皮膚には、振動(細かい皮膚の震え)を検出するためのセンサや温度変化を検出するためのセンサなどが備わっていますが、皮膚上での湿り(水分)を検出することに特化したセンサは備わっていません。そのため、他のセンサを使って、触れた対象が湿っているかを判断する必要があります。
湿りを判断するための重要な手がかりの一つとして、温度が挙げられます。皮膚に水分が付着したとき、その水分は皮膚から熱を奪って蒸発しようとします。つまり、液体に触れると指の温度が下がる(ひやっとする)という経験を我々はよくします。このような日常生活における液体との接触と冷たさの間の強固な関係を我々の脳が学習した結果、冷たいものに触れるだけで皮膚表面に水分が存在するシグナルとして解釈してしまうのだと考えられています。
冒頭では洗濯物を例に挙げましたが、布以外でも様々な素材でこの錯触が起こるようです。特にアルミやアクリルなど皮膚から熱を奪いやすい素材ほど、また、(粗い表面よりも)なめらかな表面を持つものほどこの錯触が強くなることが知られています。なめらかな表面では指と素材の間の接触面積が大きくなり、その結果、指から奪われる熱の量も大きくなることが強い錯触の原因となっているのかもしれません。
参考文献
- Filingeri, D., Redortier, B., Hodder, S., and Havenith, G. (2013). The role of decreasing contact temperatures and skin cooling in the perception of skin wetness. Neuroscience Letters,551, 65–69.
- Filingeri, D., Fournet, D., Hodder, S., and Havenith, G. (2014). Why wet feels wet? A neurophysiological model of human cutaneous wetness sensitivity. Journal of Neurophysiology,112(6), 1457–1469.
- Bergmann Tiest, W. M., Kosters, N. D., Kappers, A. M. L., and Daanen, H. A. M. (2012). Phase change materials and the perception of wetness. Ergonomics,55(4), 508–512.
- Shibahara, M., Sato, K., and Kappers, A. M. L. (2018). Relative Sensation of Wetness of Different Materials. Haptics: Science, Technology, and Applications,345–353.
デモのながれ
[1]. 冷凍庫や冷蔵庫で冷やした物を用意します
[2]. 触ってみると…
[3]. 実際には乾いているのに湿っているように感じられます
[4]. いろいろな物でぜひ試してみてください!
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。