説明
周りの指が湿ったものに触れていると、中心の乾いたものに触れている指でも湿りを感じます。これはあたかも中心の指における湿り気を判断する際に、周りの指で検出された湿り気を参照しているようにみえることから、湿り気の指間参照現象と呼ばれています。この現象は、複数の指で触れた物体の水分含有状態に関する一貫的な解釈を助けているのかも知れません。この錯触は湿り気特有の知覚処理である可能性もありますが、他の複数の錯触の組み合わせによって生じた可能性もあります。つまり、温度の指間参照現象と冷刺激による湿り気錯覚現象の組み合わせによって中指で湿り気を感じたという説です。まず、濡れた布に触れている人差し指と薬指では指に付着した水分が熱を奪うため冷たさが検出され、このとき温度の指間参照現象によって中指にも冷たさを知覚されたのかもしれません。そして、乾いていても冷たさを感じると湿り気を感じるので(冷刺激による湿り気錯覚現象)、中指でも湿り気を知覚したのかも知れません。
では、濡れた布に中指を、乾いた布に人差し指と薬指を押し当てた場合は、乾きの指間参照と言える現象(つまり中指における乾きの錯覚)は生じるのでしょうか? 興味深いことに、このような乾きの錯覚は生じにくいようです。これは、乾いているところを見つけることよりも、湿っているところを見つけることのほうが重要なためかもしれません。湿ったものに触れることは、体温低下や衛生状態悪化の原因になります。そこで脳や神経系はこのような危険な状態をいち早く正確に検出するために、乾きよりも湿りを積極的に検出できるような戦略を取っているのかもしれません。
参考文献
- 柴原舞, 渡邊淳司, 何昕霓, & 佐藤克成. (2022). Wet Referral:湿り感の指間参照現象の検討.日本バーチャルリアリティ学会論文誌,27(1),14–17.
デモのながれ
[1]. 3枚の布を用意します
[2]. 両端の2枚を水で湿らせます
[3]. それぞれの布の上に指を置きます
[4]. 真ん中の湿っていない布も湿っているように感じられます
[5]. なぜ、このように感じられるのでしょうか?
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。