説明
硬いフレームに指腹より一回り小さいサイズの穴を開けて、そこから指腹を出してみてください。指腹がこんもりと穴からせり出してくるのが目で確認できるかと思います。その状態で割り箸の先端に触れてみると、割り箸の先端が消しゴムくらいの柔らかさに感じるのではないでしょうか。直接割り箸の先に触れたときと比較してみると、その柔らかさの違いがわかりやすくなるかと思います。
この現象において、指腹のどれくらい広い領域が割り箸の先端に触れているかが重要なのではないかと考えられます。割り箸の先に直接触れると、割り箸の上部と指腹だけが触れているのが目で確認できます。一方で、穴越しに指を出すと指腹が穴からせり出してくるため、そのまま割り箸の先に触れると指腹の肉が割り箸の側面にまで回り込むのではないでしょうか。このように物体との接触面積が大きくなるような状況を作ると、我々はその物体をより柔らかく感じるようです。
これまでの研究において、指で触れた物体の柔らかさを判断するにあたって、物体と皮膚の接触面積(もしくは皮膚に生じる圧力の空間パターン)が一つの有力な情報になるということが示唆されています。硬い物体は変形しにくいので、強く押し込んでも物体と皮膚の接触面積は適当なところで飽和してしまいます。一方で柔らかい物体は押し込むと指を包み込むように変形するため、その接触面積が大きくなる傾向があります。人間はその情報を活用しているようで、触れたときに皮膚上で広い接触が検出されると、その原因を触れた対象の柔らかさに求めるのだと予想されます。
参考文献
- Tao, Y., Teng, S.-Y., & Lopes, P. (2021). Altering Perceived Softness of Real Rigid Objects by Restricting Fingerpad Deformation. In The 34th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology. UIST ’21: The 34th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology, 985-996.
- Ambrosi, G., Bicchi, A., De Rossi, D., & Scilingo, E. P. The role of contact area spread rate in haptic discrimination of softness. In Proceedings 1999 IEEE International Conference on Robotics and Automation, 305-310.
- Bicchi, A., Scilingo, E. P., & De Rossi, D. (2000). Haptic discrimination of softness in teleoperation: the role of the contact area spread rate. IEEE Transactions on Robotics and Automation, 16(5), 496–504.
- Moscatelli, A., Bianchi, M., Serio, A.,Terekhov, A., Hayward, V., Ernst, M. O., & Bicchi, A. (2016). The Change in Fingertip Contact Area as a Novel Proprioceptive Cue. Current Biology,26(9), 1159–1163.
- Dhong, C., Miller, R., Root, N. B., Gupta, S., Kayser, L. V., Carpenter, C. W., Loh, K. J., Ramachandran, V. S., & Lipomi, D. J. (2019). Role of indentation depth and contact area on human perception of softness for haptic interfaces. Science Advances,5(8).
デモのながれ
[1]. 厚紙から直径10mm程度の円を切りぬきます
[2]. 厚紙を手に持ち、切りぬいた部分に指を押し当てます
[3]. その指で割りばしの先に触れると、実際よりも少しやわらかく感じられます
[4]. 他の指でも割りばしの先に触れて、感触の違いを確かめてみてください!
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。