説明
丸く盛り上がった面に手や指を置いてしばらく触れたあと、平らな面に触れるとその面がへこんでいるように感じられることもあります。逆に、ゆるやかにへこんだ面をしばらく触れたあと、平らな面に触れると丸く盛り上がって感じます。つまり、しばらく凸の曲面もしくは凹の曲面に触れると、そのあと触れた平らな面が反対方向の曲率を持った面として感じられます。動画では指とスプーンで生じる錯覚を扱っていますが、サッカーボールなどの大きいボールと手のひらでも同様の錯覚が生じるそうです。
出っ張ったものに触れ続けると形状を写し取ったようにしばらく皮膚がへこんだままになるので、このような錯触が生じるのは当たり前ではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、最初に触れた形状が皮膚に残り続けることが原因だと考えるならば、最初に触れた形状をそのまま感じそうなものですが、この錯触ではむしろ最初に触れた形状とは逆方向の形状を錯覚してしまいます。
これは凹凸に対する残効と考えられます。残効は運動残効や定位残効のページでも解説した通り、ある特定の特徴に対して神経細胞が一定時間反応し続けると、そのあと反応が鈍ってしまい(順応)、相対的にその特徴と反対の特徴に対する神経細胞の反応が強くなる現象です。つまり、凸の曲面に触れ続けることで、凸特徴に対する神経細胞の反応が鈍ってしまい、相対的に凹の曲面に対する神経細胞の反応のほうが強くなる(凹を感じやすくなる)のかもしれません。
参考文献
- Vogels, I. M. L. C., Kappers, A. M. L., andKoenderink, J. J. (1996). HapticAftereffect of Curved Surfaces. Perception,25(1), 109–119.
- van der Horst, B. J., Duijndam, M. J. A., Ketels, M. F. M., Wilbers, M. T. J. M., Zwijsen, S. A., & Kappers, A. M. L. (2008). Intramanual and intermanual transfer of the curvature aftereffect. Experimental Brain Research,187(3), 491–496.
デモのながれ
[1]. スプーンを用意します
[2]. 指をスプーンの盛り上がっている部分に押し付け、もう片方の手の指を机の上に置きます
[3]. そのまま10秒数えます
[4]. 10秒たったら、スプーンに押しつけていた指を机の上に移動します
[5]. 机の上の平らな面がへこんでいるように感じられます
[6]. ぜひ試してみてください!
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。