説明
魚の骨のような模様で切り取られた紙を用意し、まずは上から静かに指を押し付けてみてください。背骨の高さも助骨の高さも変わらないように感じるかと思います。では、その魚骨模様を、背骨に沿ってなぞってみてください。背骨の部分が助骨の部分と比べてへこんで感じられるのではないでしょうか。
この錯触において重要なことは、背骨に沿ってなぞったときに、中央の背骨領域よりも周辺の助骨領域において皮膚の変形や振動が大きくなるということです。このような周辺の助骨領域における皮膚の変形や振動が、実際にへこんだ溝をなぞるときに生じるものと似ている可能性があります。へこんだ溝を指でなぞるとき、溝内部を押し込む力よりも溝の周辺領域を押し込む力のほうが大きくなるので、溝の周辺領域において指の皮膚が大きく引っ張られて変形することになります。逆に言えば、このように中心部よりも周辺部において指の皮膚が大きく変形していることが、溝形状かどうかの手がかりになりうるのです。魚骨触錯覚が起こるのは、人間が皮膚の空間的な変形パタンをもとに触れている面の形状を推定しようとする性質を持っているからなのかもしれません。
参考文献
- Nakatani, M., Howe, R. D. & Tachi, S. The fishbone tactile illusion. Proc. Eurohaptics 20, 69–73 (2006).
- Nakatani, M., Kobayashi, Y., Ohno, K., Uesaka, M., Mogami, S., Zhao, Z., Sushida, T., Kitahata, H., & Nagayama, M. (2021). Temporal coherency of mechanical stimuli modulates tactile form perception. Scientific Reports, 11, 11737.
デモのながれ
[1]. 魚の骨のような形に切りぬいた紙を用意します
[2]. 机の上に置いて指先で中心の長い部分をなぞります
[3]. ごしごしごし…
[4]. すると、中心の長い部分がへこんでいるように感じられてきます
[5]. ぜひ試してみてください!
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。