説明
スライダーの値が大きくなるほど、雑音が強く(音圧レベルが高く)なります。雑音のレベルが低いときには音楽が途切れ途切れに聞こえますが、レベルを上げるにつれてなめらかになってきます。どの値のときに完全になめらかに聞こえるかを記録して、「マスキング可能性の法則(レベルの関係)」のときの値と比較してみましょう。左右の耳に呈示されている雑音のレベルは、このデモも、「マスキング可能性の法則(レベルの関係)」のときも、スライダーの値が同じであれば等しくなっています。注意深く聞くと、このデモの方が、完全になめらかに聞こえるためにはスライダーの値を大きくしなければならないのではないでしょうか。
マスキングの効果は、レベルや周波数帯域だけではなく、左右の耳の「ずれ」によっても変わってきます(→両耳マスキングレベル差)。「マスキング可能性の法則(レベルの関係)」のデモでは、雑音も音楽も、左右の耳に呈示されている信号はまったく同一です。一方このデモでは、音楽は左右同一ですが、雑音は左右で信号のプラスとマイナスが逆転している(位相が反転している)のです。こうすると、マスキングの量が低下します。その結果、連続聴効果は生じにくくなるのです。
これも「マスキング可能性の法則」の一種です。両耳のずれ(日常の環境では聞きたい音と妨害音との空間的な位置の違いに由来します)を利用して、より正確に「補うべきか否か」を判断するという聴覚システムの賢い機能の現れとみることができます。
(『音のイリュージョン』p.8-12)
参考文献
- Kashino, M. and Warren, R. M.: Binaural release from temporal induction, Perception & Psychophysics, 58(6), 899-905, 1996.
- 「音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。