説明
妨害音(マスカー)が存在すると聞きたい音(ターゲット)が検出しにくくなることをマスキングと呼びます。片耳では完全にマスキングが生じてターゲットが検出できなくても、両耳で聞くとターゲットが検出できるようになる場合があります。片耳と両耳のマスキング量の差(マスカーの音圧レベル一定のときぎりぎり検出できるターゲットの音圧レベルの差)を両耳マスキングレベル差と呼びます。
AとBは、左耳の信号はまったく同じですが、Bでは右耳にもマスカーだけが提示されます。すると、マスカーは増えたはずなのに、ターゲットの検出がしやすくなります。 CとDは、片耳で聞くと全く差はありませんが、両耳で聞くと、Cではマスカーが左右同位相(全く同じ波形)なのに対し、Dでは左右逆位相(波形の正負が逆)になっています。
このようにマスカーとターゲットの両耳間位相差が異なる場合には、同じ場合に比べて、ターゲットの検出がしやすくなります。やかましい環境で聞きたい音を聞く場合、両耳で聞くと片耳より聞き取りやすいのは、このマスキングレベル差によるところが大きいのです。
(『音のイリュージョン』p.11)
参考文献
- 「音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。