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錯聴先行音効果

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L
C
B
B

ヘッドホンを使って聞いてください。 バーチャルリアリティの技術を使って、真正面(C)とその左右(L, R)にスピーカがおかれている状況を模擬した音が再生されます。まずはC, L, Rの再生ボタン を押して、それぞれの音を聞いてみてください。Cでは低いピッチのブザーが正面から聞こえ、L, Rでは同じ音(高いピッチのブザー)がそれぞれ左、右側から聞こえますよね。(人によっては、体の前ではなく頭の中で音がなっているように聞こえるかもしれません)
次に、DEMOの再生ボタン を押すと、Cのスピーカーの音と、 L, Rのスピーカーの音が交互に鳴ります。最初はLとRの音は完全に同時に鳴らされますが、繰り返すうちに、少しずつLとRの時間がずれていきます(Lに対してRの音が遅れます。下の説明の図を参照)。LとRがなっている部分(高いピッチのブザー)に注意して聞いてみてください。L, Rの音はどこから聞こえてくるでしょうか? 単独で鳴らした時のように、左右に分かれて聞こえますか? Rの遅れが大きくなるとともに、聞こえ方はどのように変わるでしょうか?

説明

DEMOの再生ボタン を押すと、Cからの低いピッチのブザーとLとRからの高いピッチのブザーが繰り返されます。低いピッチのブザー(C)は単独で鳴らした時と同じもので、常に正面中央から聞こえます。この音が示す正面を基準として、高いピッチの音の方向に注意して聞いてみてください。この高いピッチの部分では、LとRから音が鳴らされているにもかかわらず、多くの場合、LとRで単独で再生したときのように左右から音が聞こえるわけではありません。

高いピッチ部分におけるLとRの時間差は、順に0, 0.3, 0.6, 0.9, 1.2, 1.5, 3, 5, 20 msと大きくなっていきます。音列前半のLとRの時間差が小さい条件では、LとRの音は融合して一つに聞こえます。音の繰り返しに伴って時間差がゼロから徐々に増えるにしたがって、その音像は正面中央から少しずつ左にずれていきます。そしてその時間差がある程度より大きくなると、その音像の位置は、Lが単独で鳴る場合と変わらなくなります。再生される音列の最後のほうで、LとRの時間差が十分に(このデモでは5ミリ秒以上)大きくなってようやく、Rに相当する音が反対の右側からエコーのよう聞こえるようになります。

このように、先に耳に届く音が「早い者勝ち」で、融合された音像の位置を決定してしまうのです。同じ音が時間差を伴って別々の方向から届く際に、融合して知覚される音像の方向が先行する音源に支配されてしまう(遅れてくる音源は方向知覚に寄与しない)この現象は「先行音効果」と呼ばれています。

日常生活の例として、室内で音を聞き、その到来方向を判断する状況を考えてみましょう。我々の耳に入ってくるのは、音源から直接から耳に届く音のみでなく、壁などの反射を経て別方向からやや遅れて届く音との混合です。日常生活でありふれたこの状況の中で、私たちは壁から反射してくる音を直接音とは別物だと知覚することはありませんし、方向を間違えることもめったにありません(音源や部屋の条件によりますが)。このように、私たちが後から届く音に惑わされずに、耳に最初に届く音に基づいて音源方向を正しく判断できるメカニズムを先行音効果は反映していると考えられます。

参考文献

  • Litovsky, R. Y., et al.: The Precedence Effect. The Journal of the Acoustical Society of America 106 (4): 1633–54, 1999.
  • 飯田一博: 空間知覚・両耳聴, 音響学講座 5 聴覚(古川茂人 編著), コロナ社, 99-128, 2021.

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
  • 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。

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