説明
AとBは高い音と低い音の周波数差が1半音、CとDは12半音(1オクターブ)です。AとBのときは、タイミングがずれている方がすぐにわかったのではないでしょうか。しかしCとDは難しいですね。特に長い間聞いているとますますわかりにくくなります。
図1:A
図2:B
図3:C
図4:D
AとBは周波数差が小さいので、ひとまとまりの流れとして知覚されやすいのですが、CとDは周波数差が大きいので、ふたつの流れとして分かれて知覚されやすくなっています(→音脈分凝/周波数差)。ひとつの流れの中ではタイミング判断は簡単ですが、別々の流れにまたがったタイミング判断は困難なのです。
まとまって知覚される系列の中ではタイミング判断は正確で、関係ないものの間では正確でないという現象は、さまざまな感覚に共通しています。視覚の例を挙げてみましょう。
ランプを横一列に並べ、右から左に順番にひとつずつ点灯しては消していきます。すると、ひとつの光点が右から左にスムーズに移動していくように見えます。このとき、ランプのうちひとつでも点灯しなかったり、点灯する順番が違ったりするものがあれば、すぐに検知できます。
ここで、その動きの軌道のすぐ下にもうひとつのランプを用意して、移動する光点がその真上を通過した瞬間に点灯(フラッシュ)させます。物理的関係からするとふたつの光点が縦に並んで見えるはずです。ところが、移動する光点が通り過ぎた後で静止した光点が点灯したようにしか見えないのです。スムーズな動きと突発的なフラッシュは別々のできごととして知覚され、両者のタイミングの判断は正確にはできないのです。この現象はフラッシュ遅れ錯視と呼ばれ、その仕組みについては論争の的になっています。
(『音のイリュージョン』p.67-70)
参考文献
- 「音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。