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錯聴連続聴効果における後付け的な知覚

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A
B
C
D

再生ボタン を押すと、「ピー」という音が鳴ります。B-Dでは、短い雑音も加わります。「ピー」という音と雑音とのタイミングに注意して聞いてみましょう。

説明

Aの音は、周波数が連続的に上昇する正弦波で、その中ほどで一瞬(100 ms)音が途切れます。Bの音は、Aの音の途切れた部分に雑音が埋め込まれています。Cの音は、正弦波の周波数が雑音の前までは上昇し、雑音の後では下降します。Dの音は、周波数上昇する正弦波の直後に雑音が鳴って終わりです。

B、Cでは連続聴効果が生じて、連続的な「ピー」という音に加えて、その途中で雑音が鳴っているように聞こえるのではないでしょうか。一方Dでは、「ピー」という音の後に雑音が聞こえます。

ここで興味深いのは、B-Dでは、雑音の終了時点までは、音の物理的な特性はまったく同一であるということです。雑音の次を聞かない限り、雑音部分をどのように補完すべきか知るよしもありません。しかし、聞いた印象としては、B、Cでは雑音が鳴っている最中にも「ピー」という音は途切れませんし、Dでは雑音の中には「ピー」という音は聞こえません。

唯一合理的な説明は、「雑音の後を聞いてから、後付け的に雑音部分が補完された」というものです。知覚の中での時間は、過去から未来へ一方向に流れているわけではありません。同様の例は、他の感覚でも知られています。

その視覚の例として「仮現運動」のデモを見てみましょう。

このデモでは、ランプを3個、直線状に等間隔に配置しています。最初に真ん中のランプを点灯させ、次に左右どちらかのランプを点灯させます。適当な時間条件を選ぶと、続けて点灯させた2個のランプの間を光点が滑らかに移動していくように見えます。 この場合、ランプの間には実際には光は存在しないのですが、脳は動きの軌道を補って知覚します。

問題は、この軌道がどのタイミングで知覚されるのかということです。動きの軌道だから、当然動きの到達点のランプが点灯する前に見えるはずです。実際、そういう印象があります。しかし理屈上、先ほどの連続聴効果の例と同様、観察者は、2番目のランプを見ない限り、点が左右どちらに動くのか知る由もないのです。2番目のランプを見た後で、後付け的に知覚がつくり出されていると考えるより他はないのです。

ちなみに、フラッシュ遅れ錯視の仕組みに関して論争があると[時間知覚/音脈分凝1]で述べましたが、ひとつの有力な説は、これも後付け的な処理によるというものです。いろいろな実験結果によると、フラッシュが現れてから80ミリ秒程度後の情報によって、フラッシュの見え方が決まっているようです。

(『音のイリュージョン』p.70-73)

参考文献

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
  • 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。

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音素修復とタイミング

連続聴効果における後付け的な知覚

逆転の効果

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