説明
円形のパターンがたくさん描かれています。ある形が隠されていますが、なかなかわかりません。そこで、動画を再生してみましょう。しばらくして絵が90度回転すると、画面の中心に「ハート型」が現れました。ハート型を形作る円形のパターンは、まるで「たこ焼き」のように飛び出て見えます。一方ハートの背景に埋め込まれた円形のパターンは、たこ焼きを取り出した後の鉄板の穴ように、凹んで見えます。
しばらくして、再度、絵が90度回すると、ハート型は再び消えてしまいます。
90度回転させるだけで、なぜハート型が見えたり隠れたりするのでしょうか。個々の円形パターンが持つ陰影のグラデーションがそのカギです。陰影はモノの形と密接に関係しています。そのため、写実的な絵を描こうとする時は、適切な陰影をつけることが重要です。脳は、陰影の情報を使って形を認識しています。そのような過程は、陰影からの形状復元(shape from shading)とよばれています。
さて、脳が陰影から形の情報(立体感)を得ようとする時には、ある原則を守っています。それは、「光は上から来るはずだから、その原則に合うように形を認識しよう」という原則です。そのために、上が明るく下が暗いグラデーションを持つパターンはでっぱって見えるのです。上から照らされた時、飛び出たパターンは、上が明るく下が暗くなるはずですから。一方、凹んだパターンは、上が暗く下が明るくなるはずです。脳がこのような原則に基づき形を判断しているため、図1で左右のパターンは全く違って見えるのです。
ところが、グラデーションの明るい部分が右や左にあるときには、上記の原則は当てはまりません。そのため、脳による形の解釈は曖昧になります。図2では左右のパターンがさほど違って見えないのは、脳にとってこれらのパターンは、ふくらんでいても凹んでいてもよいからです。ハート型が最初見つからなかった理由は、図2のようにパターンが配置されていたからです。90度回転させるとパターンの向きは図1のようになり、ハートがたちどころにして見つかった、というわけです。
参考文献
- Ramachandran, V. S. (1988) Perceiving shape from shading. Scientific American, August, 76-83.
- Ramachandran, V. S. (1988) Perception of shape from shading. Nature, 331, 163-166.
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。