説明
声を聞いていると思っていても、実際には視覚情報の影響を強く受けていることを示す有名なデモで、発見者の名をとって、「マガーク効果」と呼ばれています。
一つ目の動画「A」は、映像は「が」、音声は「ば」のものを合成してあります。目を閉じて聞くと「ば」ですが、映像をつけると「だ」や「が」などに聞こえます。「ば」ではいったん両唇が閉じますが、「だ」や「が」では唇は半開きです。唇を閉じないで「ば」と発声することはできない、という調音の制約を、思い出せるような形の知識としては知っていなくても、暗黙の知識としては「知って」いて、映像と音声を解釈しているのです。
二つ目の動画「B」は、映像は「ば」、音声は「が」です。たまたまこのデモではあまり映像の影響はなく、多くの人は音声の通りに「が」に聞こえるのではないでしょうか(一般にこの組み合わせではマガーク効果が弱いという意味ではありません)。ところが、この背景に雑音を加えて音声を聞き取りにくくすると(三つ目の動画「C」)、今度は映像に影響されて「ば」と聞こえるようになってきます。視聴覚情報の統合は、常にどちらかが優先されるというわけではなく、その場その場でより信頼性の高い情報に重きが置かれるのです。これも日常生活できわめて役立つ機能だと言えるでしょう。
(『音のイリュージョン』p.94-95)
参考文献
- McGurk, H. and MacDonald, J.: Hearing lips and seeing voices. Nature, 264, 746-748, 1976.
- 「音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。