説明
Aは、それぞれ別々に発声した日本語の5母音(「あ」「い」「う」「え」「お」)を100 msだけ取り出して、つなぎ合わせたものです。とても人間が発声したものには聞こえませんね。ロボットの声か何かのように聞こえます。「あいうえお」ではなく、別の言葉のように聞こえるかも知れません。Bは一続きで発声した「あいうえお」です。
周波数成分のパターンを見ると、Aは母音ごとに特徴的なパターンがあり、切れ目もはっきりしています。いわば活字のようです。一方Bは、周波数成分は連続的に変化しており、母音の切れ目もはっきりしません。人間の調音器官(舌や唇など、言語音を発声するときに使われる器官)は滑らかにしか動けないので、一続きに発声するとどうしてもBのようになります。脳は、調音器官がどのように動くか(動けないか)を知っていて、Bのような音を正しく解読することができます。しかしAのような音は、人間の調音器官では決して発声できないので、正しく聞こえなかったり、不自然に聞こえたりするのです。
(『音のイリュージョン』 p.27-29)
参考文献
- 「音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。