説明
「連続聴効果」や「逆転(全体・局所)」のデモは、話し声が時間的に冗長であることを示していますが、同様の冗長性は周波数領域でも見られます。このデモは、非常に狭い周波数帯域(1/3オクターブ幅)だけを残し、他の周波数成分を除去したものです(背景に弱い広帯域雑音を加えてあります)。残した帯域の中心周波数は、A: 500 Hz、B: 1500 Hz、C: 4000 Hzです(図1:Aの音、図2:Bの音、図3:Cの音、図4:Dの音(原音)の、振幅波形(上段)とサウンドスペクトログラム(下段))。いずれも、内容は十分聞き取れるのではないでしょうか。
よく、「話し声の聞き取りには○○の周波数が重要だ」などと言われますが、実際には、聞き取りを可能にする音響的特徴は広い周波数範囲にちらばっていて、その一部だけでも十分に聞き取りができるのです。このような冗長性があるからこそ、さまざまな妨害音で周波数帯域の一部がマスキングされることがしばしばある日常の環境でも会話が可能になります。
(『音のイリュージョン』p.31-32)
参考文献
- 「音のイリュージョン ― 知覚を生み出す脳の戦略 ―」 柏野牧夫著 岩波書店 2010年
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯聴デモを使用される際には、耳にダメージを与えないよう、お使いのデバイスの音量設定を最適な状態にしてからおためしください。