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錯視カニッツアの三角形

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説明

ここに描かれているのは、一部が欠けた赤い円と、くさび形になった線だけです。しかし画面の中央に、白い正三角形が見えるでしょう。本当は存在しない、この正三角形の輪郭は「主観的輪郭」と呼ばれています。イタリアの心理学者G.カニッツアによって1955年に発表されました。

その後の研究から、脳の後頭葉にある神経細胞の中に、主観的輪郭の認識にかかわっているものがあることが1984年に報告されました。つまり主観的輪郭とは、私たちの脳が作り出した輪郭なのです。

さて、この「主観的輪郭」では、輪郭で囲まれた三角形の部分にとても興味深い現象があらわれています。まずはじっくりと図形を眺めてみてください。

注目すべき一つ目の点は、「立体感」です。主観的な輪郭により作られた三角形は、すこし手前に浮き出て見えるのではないでしょうか? 白い三角形が、三つの赤い円と、逆さまになった正三角形の上に乗っているように感じられます。主観的輪郭は、立体感、つまり奥行きの印象をもたらすことがあります。次のデモ、「ありえない奥行き」では、主観的輪郭がつくる強力な立体感を感じとってみましょう。

注目すべき二点目、それは「明るさ」です。主観的な輪郭により作られた中央の白い正三角形は、背景よりも、すこしだけ明るく見えるのではないでしょうか?もちろん背景も、主観的輪郭で囲まれた部分も、まったく同じ白色です。あたり前のことですが、あるディスプレイ画面にでている白色よりも明るい色を、同じディスプレイ内に提示することはできません。白色は一番明るい色なのですから。しかしながらこの錯視は、そのような物理的な限界をも超えてしまうチカラを持っているようです。

このように、主観的輪郭から作られる面は奥行き感や明るさの印象を変えてしまうため、線分など実際の輪郭で囲んで作った面よりも、面として強い印象をもたらすのです。言いかえると、脳が積極的に作り出したからこそ、主観的輪郭による面は面としての見かけがより強まっている、ということです。

なぜ主観的な輪郭が見えるのか、それについてはいろいろな仮説があります。奥行きのメカニズムがかかわっているという説、オブジェクトの位置の推論により錯視が見えるという説、補完により錯視が生じるという説、明るさの対比が関わっているという説、エッジを検出するメカニズムの特性が錯視をもたらすという説、などです。どれが正しいのか、実はまだわかっていません。主観的輪郭は、その見かけは単純なのですが、とても複雑な視覚のしくみが関係しているようです。

このデモでは、1枚目と2枚目の画像で、一部が欠けた赤い円の向きが変わっていますが、輪郭は見え続けるでしょうか?1枚目と2枚目の画像を交互に見比べて、見え方の違いを確認してみましょう。なぜ錯視が生じるのか、新しい発見があるかもしれません。

参考文献

  • von der Heydt, R., Peterhans, E. & Baumgartner, G. (1984) Illusory contours and cortical neuron responses, Science, 224, pp. 1260-1262
  • Seghier, M. L. & Vuilleumier, P (2006) Functional neuroimaging findings on the human perception of illusory contours. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 30, pp. 595-612.

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。

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主観的輪郭一覧

カニッツアの三角形

エーレンシュタイン錯視

まがった主観的輪郭

しま模様の主観的輪郭

ありえない奥行き

まっすぐの主観的輪郭

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主観的輪郭とポンゾ錯視

存在しない立方体

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