説明
協力者に、皮膚上の2点を複数回ずつ、素早く(50-200ミリ秒程度の時間間隔で)叩いてもらってください。首尾よく叩くことができれば、実際に叩かれた場所とは異なり、皮膚上の2点の間を連続的に叩かれたように感じられます。まるで皮膚を兎が跳ねているように感じられることから、皮膚兔という名前が有名です。同様の現象は視覚や聴覚でも発見されており、感覚跳躍現象として広く研究されています。
この錯触はなぜ起こるのでしょうか?タウ効果とカッパ効果と同様に、人間は皮膚上に触覚刺激を加えられたとき、「物体が皮膚上を動くとき、ゆっくり等速に動くはずだろう」という前提のもとでその触覚刺激を知覚しようとするのではないか、という仮説が適用できるかもしれません。今回のように腕上の二点AとBを、A→A→Bと高速に叩かれたとき、何か一つの物体がゆっくり等速で腕の二点上を移動するはずであろうという期待を当てはめながら叩かれた位置を推測することになります。その結果、等速運動の前提に沿うようにAからBへと順番に動いたように知覚されるのかもしれません。
もし協力者に腕を叩いてもらうのが難しい場合や、うまく腕を叩けない場合は、100円ショップで入手可能な安価なスピーカーを使って体験することも可能です。下記の動画を参考にスピーカーを分解し、5cm離して腕に取り付け、音声ファイルを再生してみてください。スピーカーの振動が皮膚を通じて感じられるはずです。
最初に、150ミリ秒の間隔で、スピーカー(L)、スピーカー(L)、スピーカー(R)の順に音が再生されます。二回目の音がどこで提示されているように感じるか、音ではなく腕上の振動として意識を向けてみてください。
スピーカーによる錯覚デモ用の音声ファイルは下記からも再生できます。
[ 皮膚兎 音声ファイル ]
参考文献
- Geldard, F. A., & Sherrick, C. E. (1972). The Cutaneous “Rabbit”: A Perceptual Illusion. Science, 178(4057), 178–179.
- Geldard, F. A. (1982). Saltation in somesthesis. Psychological Bulletin, 92(1),136–175.
デモのながれ
デモについて
- デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
- 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。