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錯触タウ効果とカッパ効果

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動画を再生してください。腕上の2点を高速にタップするとき、タップの速さによって2点間距離はどのように変化するでしょうか?

説明

皮膚上のどこが触られたのかを正確に判断することは生き物にとって重要な能力です。例えば蚊などの脅威となりうる対象が自分の体に止まったら、正確にその対象を払いのけなければならないからです。しかし、皮膚上の二箇所以上を続けて触られるとその空間的判断が歪んでしまうことがあります。

ここでは、腕上の二点間の距離がどれくらい離れているかの判断について考えましょう。動画のように、協力者に腕上の5cm離れた二点をトントンと続けて叩いてもらってください。続いて反対の腕上の5cm離れた二点を、今度はできるだけ速く(200-500ミリ秒くらいの時間間隔で)トントンと叩いてもらってください。どちらの腕でも同じ距離だけ離れた二点を叩いてもらうのですが、素早く叩かれたほうの腕ではその二点間の距離がより短いように感じられるのではないでしょうか?このように、皮膚への刺激の時間間隔が短くなると、その空間間隔も短くなって感じられる現象をタウ効果と呼びます。

説明図 タウ効果とカッパ効果

この錯触のポイントは、日常生活ではあまり経験しないような速さで皮膚を叩かれたことにあるのかもしれません。一つの仮説として、人間は皮膚上に触覚刺激を加えられたとき、「物体が皮膚上を動くとき、ゆっくり等速に動くはずだろう」という前提のもとでその触覚刺激を知覚しようとするのではないかという説が提案されています。今回のように腕の二点間を高速にタップされたとき、何か一つの物体が腕の二点上を移動したと考えるのですが、その移動が実際よりももっとゆっくりした動きであるように期待します。二点間のタップがよりゆっくりになるように感じさせる一つの方法は、二点間の距離を実際よりも短く見積もる方法です。時間間隔が同じでも距離が短くなれば、そのぶん移動速度はゆっくりになります。つまり、この仮説に従えばタウ効果とは、不自然に速い物体の動きを現実世界に存在しうるもっとゆっくりな動きに解釈しようとした結果、2点間の距離が短かったことにしてしまう現象と言えます。

二点間のタップが実際よりゆっくりな動きになるように解釈する方法はもう一つあります。距離はそのままでも時間間隔が実際より長かったことにするという方法です。実はこれはカッパ効果として知られています。つまり、皮膚への刺激の空間間隔が長くなるほど、その時間間隔が長くなって感じられるという現象です。例えば、協力者に右腕上の6cm離れた二点を叩いてもらった後、全く同じ時間間隔で左腕上の12cm離れた二点を叩いてもらってください。同じ時間間隔で叩いたにも関わらず、左腕の12cm離れたタップのほうがよりゆっくり叩かれたように感じるのではないでしょうか。

もし協力者に腕を叩いてもらうのが難しい場合や、うまく腕を叩けない場合は、100円ショップで入手可能な安価なスピーカーを使って体験することも可能です。下記の動画を参考にスピーカーを分解し、5cm離して腕に取り付け、音声ファイルを再生してみてください。スピーカーの振動が皮膚を通じて感じられるはずです。

最初に、スピーカー(L)から音が出て、その500ミリ秒後にスピーカー(R)からも音が出ます(1つ目の刺激)。続いてしばらくすると、スピーカー(L)から音が出た200ミリ秒後にスピーカー(R)から音が出ます(2つ目の刺激)。スピーカーは腕に貼り付けたままなので、スピーカーの位置は変わらないはずですが、時間間隔がより短い2つ目の刺激のほうが、1つ目の刺激よりもスピーカー間の距離がより短く感じられるのではないでしょうか。

スピーカーによる錯覚デモ用の音声ファイルは下記からも再生できます。

[ タウ効果 音声ファイル ]

参考文献

  • Helson, H. (1930). The Tau Effect—an Example of Psychological Relativity. Science,71(1847), 536–537.
  • Helson, H., & King, S. M. (1931). The tau effect: an example of psychological relativity. Journal of Experimental Psychology, 14(3), 202–217.
  • Lechelt, E. C., & Borchert, R. (1977). The interdependence of time and space in somesthesis: The Tau effect reexamined. Bulletin of the Psychonomic Society,10(3), 191–193.
  • 須藤容治. (1952). 触空間におけるS効果の研究. 心理学研究, 22(3), 45-57

デモのながれ

[1]. このデモはAさんとBさんの2人で行います

[2]. Aさんは目を閉じて両うでをのばします

[3]. Bさんが、Aさんの片うでを順番に2か所たたきます

[4]. 次に、もう片方のうでを先ほどよりも速いタイミングで2か所たたきます

[5]. Aさんに、どちらのうでのほうが、たたかれた2か所の間の距離が短いと感じたか答えてもらいます

[6]. 実際には、たたかれた2か所の距離はほとんど同じです

[7]. なぜ、距離が違うように感じられるのでしょうか?

デモについて

  • デモの操作方法については、使用方法のページをごらんください。
  • 錯触デモを試される際には、皮膚・身体等に痛みやダメージを与えないよう、刺激強度、刺激方法、道具の操作にお気をつけください。

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